いわゆる「国連軍司令部」の韓国と日本における 国連旗使用についての事務総長としての立場
<国連事務総長への公開質問状:韓国語より翻訳、原文は英語>
国連事務総長
アントニオ・グテーレス 貴下
いわゆる「国連軍司令部」の韓国と日本における
国連旗使用についての事務総長としての立場
2019年9月30日
親愛なる事務総長
私は国連経済社会理事会が認めた非政府機構である私の組織・国際民主法律家協会と、この書簡を支持する他の市民社会団体(団体の名簿は末尾に掲載してあります)に代わり、この書簡を書いています。 私たちは、国連総会が国連の名を守るために国連の初期に決議を採択し、国連事務総長が国連旗コードを決めて尊厳を擁護すべく国連総会により承認されたことがある1) ので、この主題について総長の意見を求めるものであります。
1. 米軍は1950年7月、米国が一方的に創設したいわゆる「国連軍司令部」という名で、韓国と日本の特定軍事基地において、いまだに国連旗を使用しています。米国は1950年7月7日、国連安全保障理事会の決議84号に基づき、国連旗の使用を正当化させました。しかし、このような国連旗の使用には、いくつか深刻な問題が存在しています。
例えば安保理は、安保理決議84号により勧告された国連ではない多国籍統合司令部で国連旗の使用を承認するに当たり、重大な過失を犯しました。おそらく当時、いくつかの安保理会員国では、安保理がそのような権限を有すると信じていたかも知れません。
しかし、当時国連憲章と国連法についての最高の国際法学者であったハンス・ケルゼン教授によれば、このような見解は「国連憲章や国連総会決議167(II)号のどこにも根拠がない」 2)ののです。さらに、安保理決議84号は「北朝鮮軍に対する作戦中」の国連旗使用を 「統合軍司令部」に承認したのですが、米軍は韓国において軍事作戦を繰り広げながら、戦争の初期から「国連軍司令部」といいう名で、国連旗を使用してきました。
2. 国連旗コード[フラッグ・コード]は1947年12月19日に初めて公表され、その第8項において「国連旗は国連旗コードに拠ってのみ使用できる」と定められています。しかし、このコードには、軍事作戦で旗の使用を認めるような条項は元からありませんでした。1950年7月28日、当時のトリクブ・リー国連事務総長は、「軍事作戦において国連旗の使用は、国連管轄機構が具体的にこれを承認した時のみに使用できる」3)と規定された第6項の新たな文章をフラッグ・コードに追加しました。ケルゼン教授は、この新条項が安保理決議 84号に対する「事後的正当化」だと批判しました。4)
3. 1972年 9月 15日、28の会員国が国連事務総長に宛てた書簡において、この諸国は第27回国連総会で「朝鮮半島の自主的、平和的統一を促進させるための友好的な条件の造成」という決議の草案を事務総長に提出し、この決議第2項によれば、総会は「韓国における…国連旗使用権の廃棄を考慮すること」5)を主張しました。
その後米国は安保理に送った書簡において、「国連旗使用の自制を含め‘国連軍司令部’の露出を減らす措置を取ること6)」を約束しました。この約3か月後に米国は、安保理に送った別の書簡で、“1975年8月25日から国連旗”は “1953年7月27日の停戦協定実行と直接関連した施設を除き” 、韓国全ての軍事施設では掲揚しないと通知しました。7) 米国はこの措置を韓国での国連旗使用中止を求めてきた会員国の意志に反し、一方的に行いました。また、このような措置は、事務総長の権限と意志を無視した措置でありました。
4. 1993年12月24日、非武装地帯の南北境界線を越えたブルートス・ブルートス・ガリ (Boutros Boutros Ghali) 当時の国連事務総長は、自分は板門店に国連旗を掲揚できる権限を承認していないと述べました。8) 事務総長以前に国際法学者でもある彼の所見は、事実であり正当なものでした。
1994年6月当時の事務総長は、一歩進んで安保理決議84号が「安保理の傘下機構として統合司令部を設立してはいない」と明言しました。換言するなら「統合司令部」は国連安保理の統制下に置かれているのではなく、したがって「国連軍司令部」とも呼ぶことは出来ません。
この問題と関連し、私たちは事務総長に下記の4項目について質問致します。
1) 安保理決議84号が国連機構でない「統合司令部」で、北朝鮮軍に対する作戦過程で国連旗の使用を承認したのは、国連憲章と国連のフラッグ・コードに違反しているのではないでしょうか。
2) 米国が自分の主導で、いわゆる「国連軍司令部」を創設した後、「国連軍司令部」という名で国連旗を使用しているのは、安保理決議84号違反となるのではないでしょうか。
3) 1953年7月27日、韓国で実質的な戦闘が中断し、安保理決議84号の主な目標が達成されたにも関わらず今日に至るまで、「国連軍司令部」という名で国連旗を使用し続けることにより、米国は安保理決議84号に違反しているのではないでしょうか。
4) もしも米国が国連憲章、 国連のフラッグ・コード、そして安保理決議84号に違反しているのなら、韓国と日本における国連旗の濫用を中断させるために、事務総長におかれては今後どのような措置を取られるおつもりでしょうか。
上記の問題について、事務総長のご関心と親切なご回答が早めに行われるようお願い致します。
尊敬する事務総長へ
国際民主法律家協会
事務総長ジーン・マイア
韓国内23団体、国際団体など、合計46団体の連名
[韓国内の団体]
アジア太平洋法律家協会(Confederation of Lawyers of Asia and the Pacific-COLAP)
平和統一市民連帯(Citizen’s Solodarity for Peace & Unification)
平和オモニ会(Peace Mothers of Korea)
チャン・ジュンハ復活市民連帯(Citizen’s Coalition for Resurrection of Chang Jun Ha, the Patriot of Korea)
全国民主労働組合連盟(Korean Confederation of Trade Unions)
ユーラシア平和の道(Eurasia Peace Way)
韓国青年連帯(Korea Youth Solidarity)
民主社会をめざす弁護士の会、米軍問題研究会(Lawyers for a Democratic Society Research Committee on USFK Affairs)
別の百年を(The Tomorrow)
全国農民会総連盟(National Federation of Peasant Society)
全国女性農民会総連合 / Korean Women Peasant Association
全国女性連帯(National Women’s Solidarity)
コリア国際平和フォーラム(Korea International Peace Forum)
AOK(Action One Korea)
民主労働者全国会議(Democratic Workers’ National Conference)
全国民主化運動遺家族協議会(National Democratic Movement Families Association)
祖国統一汎民族連合南側本部(National Unification National Unity South Korea Headquarters)
進歩大学生ネットワーク(Progressive College Student Network)
統一広場(Unification Square)
良心囚後援会(Support Committee for Prisoners of Conscience for Justice, Peace and Human Rights)
韓国進歩連帯(Korea Progressive Solidarity)
全国貧民連合(National Poverty Alliance)
民主化実践家族運動協議会(Democratization
(その他海外の団体は、pdf英文ファイル参照のこと)
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脚注:
1) A/RES/92 (I), Official Seal and Emblem of the UN, 7 December, 1946; A/RES/167 (II),
United Nations Flag, 20 October 1947.
2) Hans Kelsen, The Law of the United Nations: A Critical Analysis of Its Fundamental
Problems (New York: Frederick A. Praeger, 1950), p.938.
3) ST/AFS/SGB/89, The United Nations Flag Code (as amended), 28 July 1950.
4) Kelsen, p.939.
5) A/8752/Add. 9.
6) S/11737 (27 June 1975).
7) S/11830 (22 September 1975).
8) Shawn P. Creamer (U.S. Army Colonel), “The United Nations Command and the Sending
States,” International Journal of Korean Studies, Volume XXI, Number 2, Fall-Winter 2017,
p.2
9) UN Secretary-General Boutros Boutros-Ghali letter to the DPRK’s Foreign Minister, New
York, NY, June 24, 1994.
いわゆる「UN軍司令部」の韓と日本における